春の穏やかなポカポカ陽気が待ち遠しい今日この頃でございます。 弊店では2月中旬頃から、今春のご卒入園等のセレモニーの場でお召しになられる キモノに合わす小物をお選びいただくお客様が一気に増える時期でございます。 例年ここ京都の幼稚園や小学校のご入園ご入学式に列席されるお母様方の実に6~7割の方がキモノ姿でございます(拍手) キモノ離れがささやかれるこの時代ではございますが、やはり節目節目の華やかなおめでたい場での正装は<キモノ>が まだまだ主流の京の町でございます。 もちろん正装ですから訪問着をはじめ色無地のお召になられる方が大半でございますが、 小物専門店の立場といたしましては、 どうしてもお母様方の小物のコーディネートに目が行ってしまします・・・。狭い京都の町でございますので、弊店がプロデュースさせていただいた和装小物の数々を お着物に添えていただいている方に出会う度に喜びを感じます。 そのような春期のセレモニーの場に合せられる<帯揚げ>と<帯締め>は 上品な金彩加工が施された淡い色彩の、いわゆるフォーマル調のものが大半でございます。 <梅>や<さくら>が描かれていなくても、色彩で<春>を感じるコーディネートはいつ見ても素敵ですし、 出会われる他人さんにも<春>の訪れを感じさせる季節感のお裾分けがなされるわけで 四季のある日本ならではの気遣いの心の表れだと感じます。 帯揚げや帯締め等の<帯周り>の小物に対して、人によってばらつきがあるのが<襟元>=<半襟>でございます。 大きく分けて、以下の4タイプに分かれるかと思います。 ここ京都の街中では、② > ③ > ④ > ① の順でお見かけいたします。 ③ ④は晴れのお席でのおめでたさの演出をするには抜群の効果が期待できます。 ある程度全体に刺しゅうされたボリューム感のある半襟の場合は、 その刺しゅう半襟単独で掛けられたほうが良いでしょうし ボリューム的にも色合的にもあっさりとした刺しゅう半襟の場合は、<重ね襟>を付けられるのも素敵です。 ただしこの場合<重ね襟>をあまり出しすぎてしましますと折角の刺しゅうとケンカしてしまうことがございますので 弊店といたしましては、< 重ね襟 = 約 5㎜ >がベストとご説明させていただいております。 少数派の①は全体の着姿に対して襟元が寒々しく見えてしまうことが多いようでございます。 4月ならまだしも、3月中旬ころはまだ肌寒い時期でございますので、<色半襟>ならまだしも<白半襟>のみでは 少し残念な装いとなります。 同じ小物の帯揚げや帯締めまでは色々と思いを巡らしながら素敵にコーディネートされているのにメインであるお顔のすぐ隣に位置する<半襟>を気になされない少し残念なケースと言えましょう。 最後になりましたが一番多いのが②のタイプです。 先述のように<白>もしくは<色半襟>だけでは襟元が寒々しく見えることもあり<重ね襟>を付けられるというのが大半の理由なのでしょう。なかには、「これからもおめでた事が重なりますように。」といった語呂合わせの洒落習慣から<重ね襟>をお使いになられる方もおられるはずでございます。 訪問着や色無地等の胸元が優しげな単色のキモノの色目に合せて季節感を取り入れた着姿は<襲(かさね)の色目>のごとく美しいものがございます。 ここでひとつ申し添えさせていただきたいのは、<重ね襟>のルーツについてでございます。 <重ね襟>は、現代のようにそれほど暖房器具が発達していない時代に、暖をとるためにもう一枚キモノを重ね着した際に、襟元が自然と二重三重に重なったことをヒントとして生まれたものでございます。 <飾り襟> = <伊達襟> = <重ね襟> 寒い季節の<重ね着>の名残が<重ね襟>となるわけで、しかるに、春であっても秋であっても、 汗ばむ陽気の日にわざわざ<重ね襟>を付けてお出掛けされるのは本来は暑苦しく可笑しなことなのでございます。 それはまるで夏場にブーツを履いて闊歩されるのと等しいと言えましょう。 昨今の呉服業界では、キモノを販売する際に<重ね襟>という小物が必ず必要であるかのような説明をして販売をされる販売員さんも多いようでございますが、小物屋としてはいつも疑問を感じるところでございます。 ただし、先述させていただいたように、ご結婚式などにご列席される際に、「おめでた事が重なりますように・・・」という 語呂合わせの意味合いで重ね襟をお使いになられるのは昔からの洒落風習でもありまったく問題はございません。 少々専門的なお話しになり恐縮でございますがキモノをお召しになられる際の一つ豆知識程度に覚えておいていただければ幸いでございます。 これからどんどん春めいてまいります。 京都までお足をお運びいただきにくいご遠方の方々のためにも今後もより一層ホームページの商品紹介を充実させていきたいと思います。 弊店<ゑり正>は、「半襟」「帯揚げ」「帯締め」をはじめ、「和装肌着」「着付け道具」それも他所にはない <痒いところに手が届く・・・>お品物を広く深くそろえ(オリジナル作製)させていただいる数少ない和装小物の専門店でございます。 小物のことでしたらお答えできることが多いかと存じます。 どうぞご質問等ございましたら何なりとお気軽にお問合せくださいませ。 ゑり正 九代目 店主 |